一般
FIW (完全絶縁皮膜線)とは
FIW (Fully Insulated Wire) はスイッチングトランス等で多く使用されているTIW(三層絶縁電線)の代替品です。仕上り外径の選択肢が多い事で、低価格で小型トランスが製造できる様になります。さらにTIWに比べ、巻線性、半田付け性が良い利点があります。
FIWは複数回の絶縁皮膜塗布工程を実施しており、皮膜絶縁を保証しています。
エレクトリゾーラのFIWはOBJT2に準拠し、MW85Cの承認を得ています。この数年間、自動車業界や電気・電子部品 (UL60950の様な要求なし)に納入実績があります。エレクトリゾーラのFIWは、MW85Cの規格承認を得ている為、UL 1446に規定される多くの絶縁皮膜システムとしても使用可能です。最終製品でFIWの使用を許可する規格、旧規格 IEC60950は2020年度末に新しい安全製品規格IEC 62368-1 3版が承認され置き換えられました。
FIW線
エレクトリゾーラのFIWは変性ポリウレタンP180(IEC60172準拠 温度指数 180℃ 2万時間 )をベースに開発されました。絶縁層が何層にも重ね塗りされ、高電圧均一性試験をインラインで実施、皮膜欠陥がない事を確認しながら製造されています。
FIWの皮膜厚みは 各種エナメルタイプ、グレードから選択可能です。FIW3は最も絶縁層が薄く、FIW9は最も絶縁層が厚い製品となります。
エレクトリゾーラの標準グレードはFIW 4とFIW 6としており、在庫を準備しています。このグレードは技術的パフォーマンスと手頃な価格のバランスが取れた製品となっています。
規格
FIWは多様な規格に準拠しています。基本的なエナメル線の国際規格 IEC や NEMAに加え、安全規格 , 旧規格IEC 60950, 左記の置換え規格となるIEC62368-1, UL 2353 に準拠しています。
さらに電源トランス規格(IEC 61558-1)の製品規格にも準拠しています。
製品
IEC 60317-56 及び 60317-0-7
NEMA MW85c
UL 2353
試験条件
IEC 60851
IEC UL 60950 付属書 U
IEC 61558-1
IEC 61558-2-16
UL 2353
FIWの優位性
- 皮膜グレードが選択可能(異なる皮膜厚)により 小型トランスの最適化、コスト削減が可能
- 優れた半田付け性
- 優れた巻線性
温度指数の180 °Cは UL60950 付属書Uの耐熱寿命特性に準拠、温度指数155 °C/130 °Cに於いては数値変換で実施。
UL 1446 規格に準拠した実績のある絶縁皮膜システムがエナメルワイヤー(UL規格準拠)に長年使用されています。
例 0.25mm FIW 6,390 °C, 2.4 秒で半田付け可能.
製造工程
基本的な製造工程は通常のエナメル線と似ています。 製造工程 しかし、FIWの皮膜は最大120層あり,仕上り外径が大きくなります。下記サンプルには複数のエナメル層を見やすくするため、エナメルに異なる色が付けられています。
0.25mm FIW7の多層絶縁皮膜層
更に、ワイヤー全長の皮膜欠陥がない事を保証する為、各製造ライン上に高電圧均一性試験器を設置しています。
技術データ
FIWの標準規格値
FIWの機械的性能、電気的性能、温度性能、その他(半田付性など)は 完全絶縁皮膜線規格 IEC 60317-56に示されています。
UL 2353はIEC 60950 付属書Uと似ていますが、主に短時間の電気的特性が記されています。
新しい安全基準 IEC 62368-1 ではFIWワイヤーに対し,電源トランスの安全性規格IEC 61558-2-16 (61558-1)を部分的に流用し,同様の品質要求を行なっています。
絶縁破壊電圧
FIWの絶縁破壊電圧値(BDV)はどの製品規格を適用するかによって計算値が異なります。
エナメル線のFIW規格を適用した場合(IEC 60317-0-7、 60317-56)、絶縁破壊電圧の計算値は 公称導体径と最小絶縁皮膜厚値により計算します。(最小絶縁皮膜厚 = 最小仕上り外径 – 公称導体径)
絶縁破壊電圧最小値はIEC 60317-56準拠
BDV(絶縁破壊電圧) IEC 60317-56準拠電源トランスのFIW規格(IEC 61558-2-16)を適用した場合、最小皮膜厚計算方法が誤っており、最小絶縁皮膜厚が半分の値で計算されています。結果として絶縁破壊電圧値もおよそ半分で基準化されています。
IEC 61558-2-16は,前述の誤計算(絶縁破壊電圧の計算方法)等が訂正され、IEC 61558-1として改訂されています。改訂版の大きな変更点として 180 °Cで1分間、IEC 60317-0-7 規格値に係数0.85を掛けた絶縁耐力を維持する要求が加わりました。この絶縁耐力は室温での絶縁破壊電圧(rms)によって測定されます。
IEC 62368はIEC 61558の絶縁破壊電圧値を参照していますが、IEC 61558とは異なり180 °Cでの試験は規格化していません。
絶縁破壊電圧計算値
IEC 60317-0-7準拠した最小絶縁破壊電圧は公称導体径とFIWの皮膜グレードから計算できます。
サイズ
FIWのグレードは裸銅線に塗られる皮膜量で決まります。
公称導体径毎に最小絶縁破壊電圧、必要な絶縁皮膜厚(グレード)を下記リンクにある計算器で確認できます。
質量 / 長さ
FIWは絶縁皮膜が厚い為、長さ及び質量の関係は標準エナメルワイヤーと比べ大きく異なります。
公称導体径 0,071 - 0,710 mm 、仕上り外径FIW 3 - FIW 9(IEC 60317-56準拠)と1kg当たりの線長(km)の対比は下記リンクを参照ください。
認証
FIW は下記規格に準拠しています。
UL for MW85C, UL File OBMW2.E331840
UL for OBJT2, UL File OBJT2.E316900
VDE 認証番号 40036030